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フランシスコ教皇『福音のよろこび』について

2020年01月14日

小講話 「フランシスコ教皇『福音の喜び』について」

2019.10.20 本郷教会 ペトロ聖堂

2019年10月、今、この月が「福音宣教のための特別月間」と指定されています。ちょうど100年前、1919年、第一次世界大戦が終わった後のことですが、当時の教皇べネデイクト15世が使徒的書簡『マキシムム イルド』を出されまして、教会の使命である宣教を強く人々に訴えられました。
「聖なる生活と善行を通して主イエスをより広く告知し、イエスの愛を広めることこそが宣教活動の目的」であると言われました。そして、100年前ですけれども、宣教地への司祭の派遣、そして宣教地の教会の発展を強く奨励する内容となっています。できるだけ宣教地の教会は、その宣教地の司祭そして司教が生まれ、そして増えて、宣教地の教会が自分たちのネイティブの司祭、司教によって発展することを勧める内容となっておりました。

教会はたえずその使命を自覚、そして刷新をこころがけてきましたが、ご承知のように第二バチカン公会議が開かれて、1965年に教会の宣教活動に関する教令が発表されました。この教えは「派遣」ということを強調しております
派遣というのは、英語で言えば「missionミッション」であります。教会は主イエス・キリストから派遣された神の民であります。何のために派遣されているかと言うと、宣教する為である。ですから、教会は宣教する事を指名とし、その為に設立されたのであるということを強調しております。

公会議は65年に豊かな実りをもって閉会しましたが、それからちょうど10年後の1975年に教皇パウロ6世、第二バチカン公会議を終了させた教皇様ですけれども、さらに教会の使命である福音宣教についての教えを出されました。日本では『福音宣教』という題名で出版されています。正確に言うと『現代世界の福音化について』という題名でありまして、イエス・キリストこそ最初で最大の福音宣教者であるということを力説しております。そして、さらに、福音を述べ伝えるだけでなく、派遣された場所において、その人々の文化、そしてその人々が形成している社会を、福音の精神にかなったものに変えていく働きが「福音宣教」、あるいは、「福音化」、英語で言えば、「Evangelization」であるという教えであります。そして、時が移って現在のフランシスコ教皇は『福音の喜び』という教えを出されました。この『福音の喜び』を現在、本郷教会では火曜日に読書会で勉強しております。教会の公文書は冒頭にその精神を簡潔に要約する、という習慣になっておりますので、今日はこの、『福音の喜び』の一番最初の部分をもう一度皆さんと一緒に読み上げたいと思います。

「福音の喜びはイエスに出会う人々の心と生活全体を満たします。イエスの差し出す救いを受け入れる者は、罪と悲しみ、内面的なむなしさと孤独から解放されるのです。喜びは、つねにイエス・キリストとともに生み出され、新たにされます」

この言葉は『福音の喜び』(『EVANGELII GAUDIUM』)の冒頭にある、この教えの要約となる重要な言葉であります。イエス・キリストに出会うことによって、与えられる喜びであります。
そして更に「わたしはすべてのキリスト者に、どのような状況にあっても今この瞬間、イエス・キリストとの人格的な出会いを新たにするように呼びかけたいと思います」と、続けておられます。イエス・キリストとの人格的な出会い、パーソナルな出会い、ということは例えばどういうことによって実現するのか、復活したイエスは「世の終わりまであなた方と共にいる」と言われましたので、どこでも、いつでも、イエス・キリストに出会うことができるのでありますが、それは私たちの信仰を前提とした出会いであります。そこで、フランシスコ教皇が勧める出会いの有効な道筋、手段としていくつかのことがあげられています。もちろん、一番大切なのは「ミサ、聖祭」でありますが、「聖書の通読」ということも大変重要です。それから、「みことばの分かち合い」も勧められています。「黙想会」そして「聖体訪問」をするように、と言っておられます。それから、教皇様の勧めで、特色になっているのは、「出向いて行く」という言葉でありまして、私たちは自分から出て行って、人々に福音を伝え、そして実行しなければならない、特にこの社会の中で、貧しく苦しんでいる人々、孤独、においやられている人々の所に出向いていって、キリストを伝えるようにしてください、という内容であります。

日本の司教協議会と、東京教区は「福音宣教のための特別月間」にあたって、こういう冊子『≪洗礼を受け、派遣される≫福音宣教のための特別月間(2019年10月)』を出されました。ちょっと、部数が足りないんですけどね、ここに書かれておりますので、これをぜひご覧ください。今申し上げている事の大部分は、ここに書かれていることと同じであります。

さらに、「福音宣教特別月間」において勧められることがいくつか、あります。先ほど、皆さんとお祈りしましたが、「『ともに喜びをもって福音を伝えるための祈り』を祈ってください」と。「共に喜びをもって」という言葉は、日本の司教協議会が行ったNICE(福音宣教推進全国会議)の時に司教団が出した呼びかけを連想させる言葉であります。第一回のNICEというのは、1987年の11月に行われ『共に喜びをもって生きよう』という教書が出されました。

さて、この冊子で勧められていることには、更に色々なことがあります。「殉教者、聖人の生き方に倣いましょう」と。日本は数多くの殉教者を出しました。殉教者の歩みを振り返ることが大切であります。更に今、殉教者ではないが、人々の模範となる立派な生涯を送った方もいらっしゃる。その中で尊者エリザベト・マリア北原怜子さんという方がいます。尊者というのは、その生涯が人々の模範になることを認められた方に与えられる称号です。彼女の生涯について調査が行われ、教皇庁が北原さんが、信仰、希望、愛の対神徳、あとそれ以外の人間としての徳を立派に実行した人であるということを認めて、尊者と宣言したわけです。まだ最近の方で、1958年に亡くなったんですね。ですから、何年前でしょうか、61年か。蟻の町の教会というのが、現在の潮見教会となっておりますが、帰天50周年の時に、潮見教会で記念のミサと行事がありまして、私がミサを献げました。今回、10月31日、北原さんの足跡をたどる巡礼をしようという話があって、これは、皆さんにご紹介しましたが、「蟻の町のマリア巡礼」というのが、予定されております。この本郷教会で集合して、映画「蟻の町のマリア」を鑑賞し、それから隅田公園、そこが蟻の町のあったところですが、それから潮見教会、それからお墓のある多磨霊園に行きましょうという内容でございます。まだ受け付けているようですので、よろしかったら参加して下さい。
なお、日本の教会としては、第二バチカン公会議を受けて62年から65年、そしてその10年後にパウロ6世の『福音宣教』の教えが出されて、司教たちは色々な努力をしてきました。1981年にヨハネパウロ2世が日本に来て下さったわけですね。84年に『日本の教会の基本方針と優先課題』というものを発表しました。その優先課題の中に、信徒の代表を含む福音宣教の為の会議をするということを決めたわけです。そして87年の11月に京都で第一回福音宣教推進全国会議(NICE)を開催しました。その時の記録が残っておりますが、多くの人々の提案を受けて、司教たちは福音宣教を日本において行うにあたっての決意表明を発表したのが『ともに喜びをもって生きよう』という文書であります。それは、今の人々の現実、教会の現実、社会の現実から出発してそこにイエス・キリストと出会い、イエス・キリストから喜びをいただいて、人々に福音の証しをしようという呼びかけでありました。

今回、教皇様が日本に来られる直前になりますが、福音宣教の為の特別月間を定めて、色々な道筋をつけながら私たちの宣教の使命を実行するようにということが、日本の司教団としてのみなさんに対するお願いとなっております。以上を持ちまして、今日の短い話を終わらせて頂きます。

マリア様に祈りましょう。   ≪アヴェマリアの祈り≫