2016年10月31日
ヨハネ・マリア・ビアンネ 浦野雄二神父(本郷教会小教区管理者)
四季の中でも「秋」には、いろいろな修飾語が付けられています。「芸術の秋」「読書の秋」「実りの秋」などなど。今年は不順な天候によって、大切な「実り」が破壊されてしまった土地があります。「実り」に向けて、作物を育ててこられた方のことを思うと、言葉もありません。
神学院に入学した1年、そして神学生の養成者として4年間、栃木県那須町の「ガリラヤの家」で生活しました。季節の移り変わりを直接的に感じる貴重な体験でした。春の芽吹き、鳥のさえずりの変化、5月の連休時の田植えの風景、那須岳の雪化粧などを思い起こします。
そんな中で、秋の思い出の一つは、紅葉です。毎年10月10日に、那須岳に登山をする地元の信徒の方がいて、その方に連れられて、神学生と一緒に登りました。2000年から体育の日は10月の第2月曜日になったこともあり、必ずしも祝日ではなくなりました。ある年の10月10日は、紅葉の見頃とちょうど重なりました。朝の祈りとミサを終え、すぐに出発しました。渋滞が始まる直前に駐車場に車を停めて、登り始めました。お天気も最高、景色も最高、絶景を見ながら、おにぎりを食べて、満腹し、山を下りて温泉に浸かり、皆で囲む夕食は特別な一日でした。
日常生活と異なる状況の中で、自然の中に身を置いて、特別な思いをした経験は、きっと誰もが持っていることでしょう。その時を振り返ると、素直な、やさしい気持ちの自分を見出します。自然の実りを味わう時、私たちの心がやさしさを感じる時となりますように。
本郷教会会報『ケファ』298号 巻頭言より